東都幻想物語～ Touto Genso Story Episode 5 ～【小説版】
第3章・酒呑妖精：その6
「誰が生意気な世間知らずですって！？日が落ちる前に深酔いしている不良教師が言えた義理なの！」
「昼間から酒を呑んではいけない理由は何かしら？判断力を失って仕事に支障をきたすとでも言うのかしら？それはヒトそれぞれ。呑んでも平気なら良いんじゃないかしら？そもそもアルコールに弱い人間基準で判断するのはいかがなものかしらね。頭に血が昇っているようだけど相手になってもいいわよ」
ユイの発言は明らかに挑発である。それを知らずか、晴海は迷いなくミチザネを抜き、紅く光る刀身を向けていた。
「ふ～ん。それじゃあ特別授業と行きましょうか」
「やあああああっ！」
晴海がミチザネに電気を纏わせながら思いっきり振りおろす。
（あの長刀は雷刀の類ね。刀本来の力に加えて、持ち主の力も加えているようね）
バチンッ！
刀が地面に叩きつけられると同時に周囲に電撃が迸ったが、ユイはひらりと身をかわして宙に浮いた。
「残念。ここまで届くかしら？」
宙に浮いているユイの位置は、晴海が持っているミチザネがギリギリ届くか届かない所にいるのであった。
「この！えい！コラ！降りて来なさい！」
「ホホホ！降りてこい！と言われて降りてくるヤツがいると思うの？」
「ねえ、空を飛んでいる相手に対してあなたはどう戦うの？」
ソフィアが大治郎に聞く。
「飛んでいる相手なら、精霊術のフリクションが有効だな。精霊銃で撃ち落としてもいい。後は、接近してきた時に殴りつける事だ。まあ、どれも当たればの話だが」
刀を振りまわすのに疲れたのか、晴海は肩で息をきらしていた。それもそのはず、傍からみれば、虫取り少年がちょうちょを採るために虫取り網を振り回してるように見えなかったからだ。
「あら、さっきまでの威勢の良さはどこにいったのかしら？今度は私の番ね」
そういうと空中で精霊術の詠唱を始めて発動する。酒が入っている状態でなかなかの集中力だ。発動している物はどれも扱いやすい下級精霊術であるが発動速度が非常に速く、ファイアボールやウィンドカッター等が次々と晴海に襲い掛かる。高威力な精霊術を一発当てるよりも、威力が低いが発動までの詠唱が簡単で隙が少ない精霊術を連発する方が、逆に有効な場合がある。特にすばしっこい相手には有効である。
「ほらほら、立ち止まっちゃうと当たっちゃうわよ」
ユイの発した言葉通り、放たれた精霊術から晴海が必死に逃げている。立ち止まって精霊術を放つことは当然できない。何とかしてユイを地面に叩き落とさないとこのままではスタミナが尽きて、バテた所を狙い撃ちにされてしまう。逃げ回りながらユイとの間合いを詰めているが、ジャンプして斬りかかっても詠唱を中断して避けられてしまう。
「詠唱中を狙うのは良い着眼点だけど、それはバレバレよ」
自信たっぷりに説明するユイに対して何度かジャンプ斬りを繰り返していた時、突然、ミチザネが電気を纏ったのだ。一瞬で形成された電気はミチザネの刀身を伸ばす役割を果たし、ギリギリの間合いで立ち回っていたユイは避けきれず、棒で叩かれるようにまともに受けてしまったため、地面に落ちてしまった。
「届かなければ、刃を伸ばせばいいのよ」
ライトニングソード。電気を操る能力を持つ晴海の特技だ。
「少しは頭が回るようね」
「そうはいかないわ」
再び、宙に浮かぼうとするユイに向かって斬りかかる。宙に浮かぶ事ができなければ、地上にでは晴海の攻撃が有利だ。しかし、一気に後ろに飛んで間合いを離して宙に浮こうとする。
「逃がさないわよ、サンダースピア！」
物凄いスピードで電気の弾が矢のように飛んでいく下級精霊術だ。ファイアボールよりも素早く飛んでいくので動きが速い相手に対して有効だ。ただ、ユイに命中したが、地上に落とす程の威力はなかった。
「術が得意だから、術に対する防御力は高いのね」
「残念でした。もう、さっきと同じ手はもう喰らわないわよ」
「それなら、こちらは別の攻撃を行うまでよ！月島！」
「ハッ！お嬢様、これを！」
晴海に呼ばれた月島は一丁の精霊銃を取り出し、晴海にすばやく渡した。晴海のような子供でも扱える精霊銃のタイプである。ユイに向かって銃口を向けて狙いを定めた。
続く
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