東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第2章 印旛の突撃隊長・その3
さて、戦車や歩兵のライフル相手に刀とかで対抗できるのかが疑問に思うだろう。しかし、この時代において、それは普通の事というのが一般の認識となっている。超高度文明が興るはるか昔の人間は、銃で数発撃たれただけで死んでしまうほどの虚弱な体質であったと記録には残っており、その時代から幾多の時を経て少しずつ体機能が向上していったのである。もちろん、超高度文明時代に別の惑星からやってきた人々との交配が多数行われた背景も忘れてはならない。生物学者等はこれを進化とは別の成長と説き、異種交配による肉体の強化及び多様化であると発表している。まあ、2人は少し特殊なのだが。それに加えて2人の実力は相当なレベルに達しているので、軍の一般兵や戦車くらいなら、一騎当千もしくは無双状態で蹴散らす事が可能になっている。
「こんな豆鉄砲が役に立つか!」
「クリーチャー退治とは訳が違うぞ!何で俺達の所にくるんだ!?」
「怯むな!たとえ自総研の2人相手とはいえ、勝機が無くても時間を稼ぐ事はできるはずだ!砲手!相手は正面だ!精霊弾を撃ちこめ!・・・・・・てぇ!」
オンボロな戦車から対クリーチャー用の精霊弾が放たれる。しかし、いとも簡単に砲弾を大治郎に真っ二つにされる。
「嘘だ!」
戦車に乗っている上官が叫んだと同時に、戦車はギャグマンガのように砲身や外装、キャタピラが切り落とされる。他の隊員は、武器を破壊されたり、腕や足を抑えたりしている。2人は今回のような戦闘においては武器破壊や戦闘不能にする事に専念している。無益な殺生はしない主義である。ただし、紗江が相手の場合は大治郎と違って重傷を負わされる可能性が高い。
「こちらB-1!自総研の2人は印旛支部の方に向って行った!繰り返す!自総研の2人は印旛支部の方に向って行った!」
上官はそう告げると通信機を置き、周辺を見回した。負傷して呻き声を上げる隊員、あまりの速さに呆然している隊員が目に入った。
「被害状況は?」
「だめです。この戦車はもう使い物になりません。次に精霊銃を破壊された隊員がほとんどです。後は、数名が重軽傷を負っていますが、どれも手当てをすれば問題ありません」
「上官。あの2人は何者なんですか?」
「そうか、お前は初めての実戦だったな。あの2人は自総研の菊川兄妹だ。むしろ、今回の相手があの2人で良かった。もし、他国の軍人や強力なクリーチャーだったら死人が出ていたかもしれないな」
上官は使い物にならなくなった戦車から降り、大きな溜息をつきながら空を見上げた。
「聞いていた指令と少し違うが、むしろこっちが本当の指令かな?」
そういうと上官は、部下に後方に下がる指示を出した。
続く
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