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東都幻想工房

同人サークル・東都幻想工房の近況等を報告するブログです。 また、二次創作小説等も掲載しています。

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東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】第2章・その4

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第2章 印旛の突撃隊長・その4


 最初の兵士のからの通信が入り警戒態勢におかれた部隊と度々遭遇するが、どれも装備が貧弱で話にならなかった。これらの軍隊の主な任務はクリーチャー退治のはずだが、この状態の戦力で強力なクリーチャーが出現した場合は、太刀打ちできるかどうか非常に怪しい。大治郎達の仕事として、強力なクリーチャーが出現した時の退治依頼が舞い込む事がある。この調子では、この国に別の仕事でまた来ることになりそうだ。
 「!!」
ドスン!!
 突如、上から攻撃を察知して左右に別れる2人。落下地点には菜の花柄の着物と藍色の袴を着た女性が槍を地面に突き刺している。その他の特徴と言えば、白い鉢巻と豹柄の耳と尻尾がある。その風貌から猫系の亜人と見て取れる。
 「まったくこうも暴れられてしまうと、後が大変だわ」
豹の亜人が地面に刺さった槍を引っこ抜きながら愚痴っぽく呟き、槍をこちらに向け、鋭い眼光で大治郎達を見る。
 「それであなた達がここまで暴れる理由は何かしら?ただ単に喧嘩を売りにきた訳ではなさそうね」
 「頭に王冠をつけた女性がここを通ったはずだ。その事を聞いた瞬間から、兵士の様子が変わって襲い掛かられた訳で、“仕方なく”応戦してしまった訳なんだが」
 「“仕方なく”?物は言い様ね。結構、嬉々とした表情で攻めてたみたいじゃない。特にそっちの緑髪はね」
 「随分な言い方ね。アンタの所の誰かがクラル姫を連れ去ったから私達が出張ってきたのよ」
 「連れ去った、ですって?」
 “連れ去った”という単語を聞いて豹の亜人は、一瞬顔を曇らせた。
 「そう。だけど、こっちはこっちで任務中。いくら自総研の2人でもそう簡単に教えるわけにはいかないわね。お引取り願うわ」
 そういうと、槍を構えなおす。一戦交える気だ。
 「本当に私達とやる気?少し腕が立つみたいだけど、やめておいた方がいいわよ。私は今、激烈にイライラしてるの。思いっきり八つ当たりしてしまいそうだわ。……と、言っても下がる気はないみたいね。でも先に名前ぐらい教えてくれてもいいんじゃない?」
 「私は逆井香織。これでもこの付近に展開する支部隊の隊長よ。これで良いかしら紗江さん?」
 「あら隊長さんだったのね。いいわ、私が相手になってあげる」
 紗江はそう言うと、小刀を構えた。槍と小刀。普通の人からみれば、間合いで槍の方が有利なのは明白であるが、そうはならないのがこの時代の戦闘である。睨み合いが続くと思われたが、唐突に逆井が槍を右手で回し始めた。
 “詠唱!?”
 逆井が槍回しを止め、そのまま右手を前に突き出す。紗江は横っ跳びを行うと同時に、立っていた所の地面からヒビが入り、黄色い光が溢れてくる。
ボンッ!
ボンッ!
ゴワアアァァァ!!
 尖った岩が勢い良く飛び出し、最後に大きな岩槍が地面から飛び出す!
地属性の精霊術・アースブレイクである。
 「中々、変わった詠唱ね」
 紗江はそう言いながら勢い良く懐に飛び込みつつ、刀を横凪に払う。しかし、槍の柄で受け止められ鍔迫り合いの状態になる。
ガキンッ!
 鍔迫り合いの状態からお互いの距離が少し開くと同時に柄を上げ、槍の穂先を返して斬りつけるが、紗江はいとも簡単に攻撃を避ける。
 「ふーん。少しはできるようね。じゃあ、これならどう?」
 紗江はどこからともなく、お札を取り出し投げつける。紙で出来ているはずのお札だが、狙いをすませたかのように真っ直ぐ飛んでいく。逆井は槍を大きく振り回し、風圧でお札を振り払おうとしたが、全ては払えずいくつかは命中する。
 「どうかしら?戦車だろうと何だろうと破壊する私の特製お札の感触は?」
 「あまり気持ち良い物ではないわね」
 「そりゃそうでしょう?攻撃用の呪術をかけてあるのだから。それも私特製のね」
 (背筋が凍るような感触なのに、焼け付くように熱い。精霊術?いや、もっと別の何かかしら?闇属性とも違うようだわ)
 「さて、そろそろ決着をつけるわよ」
 「そうはいかないわ”」
 紗江が再びお札を放つ。それと同時に槍を回しながら逆井が突進を繰り出す。お札を弾き飛ばしながら前進しているため、槍をふり回して払うより効率的だ。横っ飛びにかわした紗江に向って槍を払う。その軌跡から衝撃波が発生し、紗江を襲う。だが、紗江は小刀でそれを払う。
 「なかなか素早い連続攻撃ね。だけど、そのくらいの速さなら私の方が上よ!」
 風のように瞬く間に、逆井の左手側に一気に詰め寄る。柄を上げて対抗しようしたが、紗江の蹴り上げによって弾かれる。間髪いれずに当身を入れられ転倒する。そしてそのまま首元に小刀を突きつけられる。
 「速い!」
 「あなたの負けよ。知ってる事、話してもらうわよ」
 逆井の話によると、たしかにクラル姫がサウザント・リーフ王国に来る事には間違いはない。ただ、攫ったというのは聞いていた話とは全然違うという。クラル姫にはサウザント・リーフ王国の視察という名目で来てもらうため、自総研の2人に襲撃されるような物騒な事はやっていないはずであると。これ以上は事は知らない、知りたかったら本人に聞くしかないと言い、酒々井街道の方に向っていったとの事。これ以上の手がかりはないため、2人はその話を元に東へと向って行った。
【登場人物紹介・その1】
・逆井 香織(さかさい かおり)
・性別:女性
・誕生日:5月21日
サウザント・リーフ王国軍の国境警備を務める豹柄の耳と尻尾を持つ、猫系のヒト。軍内部で階級は1つの国境警備部隊の隊長を務めているため、中尉以上と思われる。
国境警備というが、日本国内ではほとんどの国がパスポート無しで出入りが自由なため、主な仕事はクリーチャーの退治である。
戦闘では真っ先に切り込む役を担う。隊長なのに。
得意な精霊術の属性は地属性。主な武器は槍を扱う。
印旛地区は広大な穀物地帯のため、農家の人達の安全を確保するのは重要なお仕事。

第3章へ続く
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