この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。
佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第三章・その6
「何の音だ?」
「鳥でも落ちてきたのでしょうか・・・って大井さん!大変です提督!大井さんが!!」
「何だって自殺未遂か!?それにしても頭から血を流しているのに、満足したような笑みを浮かべているんだ?」
「こ、このくらいのケガなら入渠させれば大丈夫のはずです!運びましょう!」
大井はヤマユリが咲き乱れるお花畑で目を覚ました。ここはどこだろう?さっきまでオンボロ鎮守府の2階にいたはずなのにだ。
身を起こし、周囲を見渡すとどこかで見た背中が見えた。そう、あの北上の背中だ。大井は無我夢中で走り出した。北上の名前を叫びつつ肩に手を伸ばした瞬間、北上は視界の上の方に消えていった。北上は雲の上に立っていた。ヤマユリのお花畑は山の頂上の所のような場所だったのであった。悲鳴を上げながら落ちる大井の視界にこちらを覗き込む北上の姿が見えた。
(大井っちが来るのには早すぎるよ)
それは幻聴かも知れないが、大井にはそのように聴こえた。その瞬間、大井の視界にボロボロな天井が飛び込んできた。辺りをゆっくり見回すと、何の事はない。オンボロ鎮守府の入渠施設の1つに自分が放り込まれていたのだ。
「きっと北上さんが心配で見に来てくれたんだわ」
幻聴それとも幻覚か彼女にとってはどちらでもよかった。北上に会えたという事だけが彼女にとって大切だったのだ。
大井は幸福状態になった。
翌日の朝、磯波と潮と大井は斉藤の執務室に呼び出された。今日は未明の漁船警護の仕事はないため、午前中に近海警備を行う事になった。
「本日の旗艦は、いつも通り磯波が行う事とする。今日から軽巡の大井が艦隊に加わるが、決して油断はするなよ。今は防御よりも攻撃の時代。頑丈な防御装備で行ったとしても、武装もより強力になっている。やられる時はだいたい一発だ。攻撃はできる限り避けるように努める事。以上だ」
「近海警備ね。このくらいの敵なら問題ないわよ」
「実戦経験豊富な人がいうとやっぱり違いますね」
「提督。今日は早く終わりそうな気がしますね」
「ああ、そうである事を祈ろう」
艤装をつけた3人が佐潟港から離れていく。近海警備で実戦経験を積んだ磯波と潮だが、まれに主力艦隊と思える一団に遭遇した事があるが、攻めきれない状態が続いていた。
「そろそろ、別の海域にも出撃したいが、あの3人がやってくれるかだな」
「大井さんの装備で相手の軽巡級を簡単に倒せるかが、要になると思われます。ただ、この佐潟港付近の近海から少し離れた所で、戦艦や空母タイプの深海棲艦がまれに出てくるとの情報もあります」
「どちらにせよ。鎮守府に所属する艦娘の増員はしなければならないということか」
そのようなやり取りをしつつ、3人からの連絡を待った。
続く
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