この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第四章・その1
明石は後悔していた。口が裂けてもあんな事を言うんじゃなかった!しかし、出来てしまったからには後に引くことは出来なかった。深夜、丑三つ時の東シナ海海上にいるが、そこは九州指令本部から進撃許可を受けていない海域なのだ。すなわち、現在の佐潟鎮守府の戦力では苦戦必死の所である。不幸中の幸い(明石にとって)なのだろうか。今日は新月。月明かりが全くない中、手元のモニターを必死に見ていた。
――数週間前――
「えっ?私のクレーンの性能ですか?」
「そうだ。そのクレーンは艦娘一人くらいなら、持ち上げられるのか?」
「ええ、大丈夫ですよ。駆逐艦から超弩級戦艦まで持ち上げられます。艤装がなければ、持ち上げるスピードも上がります」
「でも、そのクレーンの先端だと引っ掛ける形だよな。マジックハンドみたいに掴むタイプは無理だろう?」
「心配ありません。崖の下だろうと水の中だろうと、この子達がくっつけてくれますので」
そういって工廠の片隅に目を向ける。そこにはコロボックルが黙々と作業していた。一応、このコロボックル達は、艦娘達は妖精さんと言っているようだ。
「そうか。ならば水深200mくらいに沈んでいる物を引き揚げられように用意してくれないか。引っ掛けられない場合は括りつけて引き揚げられるような場合も用意してくれると助かる」
「何かサルベージするみたいですね。わかりました。おそらく一週間くらいで出来ますね」
「わかった。早速、作業に取り掛かって欲しい。少し先だが、船の改造も頼みたいからな」
「クレーンの次は船ですか。ますます気になりますね。どんな宝物を引き揚げるつもりですか?」
「それはまだ言えないな」
そう言って斉藤は執務室に戻っていった。それと同時に出撃していた磯波達が佐潟港に戻ってきた。新たに出撃が可能になった海域だが、戦果はイマイチだ。佐潟港に来る前から実戦経験が豊富な大井は無傷であるが、磯波と潮が中破であった。沈める事が出来たのは5隻中2隻で、全部、駆逐イ級であった。
「出撃する人数を増やすべきだわ!経験でフォローできる範囲も限度があるわよ!」
大井は戻ってくるなり、斉藤の机を叩きながら声を張り上げた。
「それはわかっているさ。戦闘は質よりもまずは数だ。少ない数で大勢の敵を相手にするには、今の戦力ではまず無理だ」
「わかっているなら、あの埃を被っている機械を動かしたらどうなのよ!?」
「あの機械は出来る限り使いたくないな。一番の理由は、欲しい艦種の艦娘が確実に出ないからだ。今まで溜めた資材を投入して駆逐艦が出たとしても現状を打破できるとは到底思えない。現に駆逐艦の本領は夜戦だからな。大井、君も最低でも軽巡クラスが仲間にいたらいいなと思うだろう。重巡以上のクラスが一隻いればなお良しだな」
「ふーん。何も考えていないという訳ではないようね」
「そうだ。所で、沈んでしまった艦娘がどうなってしまうのか気にならないか?」
この質問に、執務室にいた全員がきょとんとした顔つきになった。
「皆、疑問に思った事はないのか?沈んでしまった艦娘はその後、どうなるのか誰も知らないんだぞ。俺は気になる。深海棲艦の駆逐艦のエサになってしまうのかという疑問もあるからな。まあ、その話はまた今度だな。磯波と潮は入渠。明日は漁の護衛があるからしっかりと休んでおく事。以上、解散」
続く
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