東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第3章 新米隊員の悲劇・その3
「随分、古典的な隠し扉だな」
精霊銃で上官を牽制しつつ、大治郎もそこの隠し扉から中に飛び込む。どうやらここがアタリのようだ。一方で紗江が戦闘を行っているのは隣の区画のようだ。どうやら、ここの防衛部隊の基地はいくつかの区画に分かれているようだ。
「HQ!HQ!」
『こちらHQ!』
「こちら酒々井防衛部隊!敵の襲撃を受けている!相手は2名!!増援を!!」
『了解した、増援を送る。何としてでも追い返せ』
新米が無線で増援を要請した光景が目に入る。通信を終えて1分もしないうちにどことなく増援部隊が現れた。
「敵はどこた!?」
「あそこだ!撃て!」
攻撃をかわしつつ、柱の陰に滑り込む。壁の向こう側から紗江の叫び声と共に壁を突き破って、兵士が飛び込んでくる。その光景に一瞬、静寂が訪れる。
「いきなり現れてどこ触ってるのよ!」
どうやら名も無き兵士は紗江のいけない部分を触ってしまったようである。しかし、強烈な一撃を喰らって気絶しているのでその叫びは聴こえてないだろう。
「紗江、取り込み中悪いんだが周りの兵士を担当してくれ。こっちはあの赤い銃を持っているヤツを担当する」
「はあ!?何で私が!!?」
「そりゃ、他の兵士と違って一人だけ違う装備を持っていたら何かあると考えるのは普通じゃないか」
新米は思わず叫んでしまった。そして自分自身の境遇を嘆いた。たまたま、赤色の新型精霊銃のモニターをまかされだけなのに、集中的に狙われる事になる日が来るとは考えもしなかった。しかも相手は自総研、最初から勝ち目はない。何分持つかどうかという持久戦になってしまった。まるで闘技場で見世物にされる動物のような気分だ。どちらにせよ戦闘は不可避だ。
「新米(しんまい)が狙われている!新米(しんまい)を援護しろ!」
「あら、随分と部下思いの上司なのね」
上官の言葉と共に戦いの喧騒が再開される。紗江は上層に上って新米を援護する兵士と対峙する。援護が目的の兵士と言えども目の前に立たれてしまったら、相手をせざるを得なくなってしまう。その中、大治郎と戦う事になった新米は精霊銃を地面につき立て引き金を引く。銃声の後、火柱が地面から連続発生しながらこちらへ迫ってくる。動きは直線的であるが、他の兵士からの援護射撃があるため動きが阻害される。
「えーと、次は・・・これね」
新米は銃の手元のトリガーを何やら操作しながら上空に銃口を向け発射する。発射された弾は複数に別れ、雨のように降り注ぐ!もちろん、援護射撃があるため動きが阻害される。援護に来ている人数はそれなりいるようだ。
新米が使っている精霊銃の攻撃方法を見て大治郎は、あの精霊銃は通常のカートリッジではなく、複数の攻撃手段や複数の属性弾が撃てる可変式カートリッジを搭載しているようだ。通常の精霊銃はセットしたカートリッジに基づいた攻撃や属性が着く。通常弾から三弾タイプや違う属性の精霊弾を放つ際には対応したカートリッジに交換する必要がある。しかし、可変式カートリッジは交換の必要が無く、銃に取り付けられたトリガーで簡単に切り替えができる。属性も複数セットできる。可変式カートリッジには副次的効果もあり、所持者が精霊術を使う事ができれば発射する弾の種類や攻撃方法、はたまた属性まで任意で変えることが可能となる。そのような使い方は精霊銃技と呼ばれ、可変式カートリッジが組み込まれている精霊銃の所持者の大半は大治郎もそうだが精霊銃技を扱う。欠点と言えば、可変式カートリッジは若干大きいため銃が少し大きくなってしまう事だ。
続く
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