この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第四章・その3
「えっ?提督が妙な物を陳情したんですか?」
「そうなんですよ。業務報告をしたら船を陳情したと言われたんですよ」
「“船”ですか。そんな物も陳情できるんですね」
「明石さんがクレーンを慌しく改造しているのも関係していると私は思います」
翌日の夜、磯波と潮の部屋で、斉藤が陳情した物の話で盛り上がっていた。ここ最近、工廠が忙しくなったり、大淀さんが変な情報を調べていたりという、いつもと違う雰囲気の鎮守府に様子に色々な憶測が飛ぶ。そんな中、我関せずと言った様子で北上さん、北上さんと連呼しながら枕に抱きついていた。相変わらずである。
数日後、佐潟港に妙ちきりんな船が運ばれてきた。奇妙な格好なのは何故だろうか。
「菊地。これは大発動艇か?いや、ただの大型漁船か?」
「いや、わからん」
「わからない?それはどういうことだ?」
「使っていない放置されていた船を当たって見た所、漁船とは思えないが、それなりにいい大きさの船が見つかったら持ってきた。エンジンは別に1つ持ってきたから適当に改造してくれ」
そういうなり菊地提督は逃げるようにさっさと帰っていった。菊地提督が置いていった船は屋根があるが、ほとんどが壊れておりオープンカー状態になっている。この様子だと中は風雨の所為で相当痛んでいるだろう。
「このボロ船は何?一体何を企んでいる訳?」
鎮守府の片隅で干物を齧っていた大井が近づいてきた。何かしらの興味は有るのだろう。
「どこから持ってきたのこれ?見た感じかなり長い時間、放置されてたみたいね」
「そうだろうな。どこにこんなのが放置されていたんだか」
そう呟きながら中の様子を見るため船に入っていく。中は相当痛んでいるが、畳らしきものが確認できた。
「あー、大井。これは屋形船だ。おそらく商売上がったりでどこかに不法投棄された物だろう」
事実、深海棲艦が出没してからという物の遊覧船やクルージング等の観光産業は大打撃を受けた。漁船ですら深海棲艦に襲われる状態であるので、無防備な客船がどうなるかは火を見るより明らかである。かの有名なクイーン・エリザベス号も深海棲艦に襲われ沈没。乗員乗客の死体すら見つからない最悪の結末となった。それゆえ、東京湾等外海から離れている部分を除いては、遊覧船は姿を消し、船舶は島と島を結ぶ航路と物資を運ぶ貨物輸送に専念する事になった。
「しかし、これは酷いな。修理するにも時間がかかりそうだ」
「この鎮守府にお似合いじゃないの。どうせ直すんでしょ?何を考えているかはわからないけど、まさか漁に出ようとか、執務室をここに移そうとかそんな事を考えているのかしら?」
「さて、それは出来てからのお楽しみだ」
変な秘密主義ねと思いながら、大井は持っていた干物を噛み千切っていた。
続く
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