東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第3章 新米隊員の悲劇・その2
「第二防衛ライン突破されたぞ!すぐに来るぞ!!」
「司令部に応援を要請しろ!」
酒々井街道に広がる防衛部隊の詰め所はさらに慌しい雰囲気となっていた。新米隊員の新米は銃を持ちつつ、途方にくれていた。
(どうしてよりによって今日なのよ??)
新米は持っていた赤い銃を見た。この銃はつい最近、よくわからない理由で渡された物であった。何でも最新型の精霊銃で、新鮮なデータを取るために実戦経験が少ない人に使ってもらいたいらしいという理由で押し付けられてしまった。説明書と一通りの使い方は覚えたが、クリーチャーとの戦闘は一度もおこなって経験しておらず、なおかつ自総研の2人に通用するかは全くの未知数だった。そんな不安の中、彼女がいる詰め所では街道側の扉を閉めて、2人の襲撃に備える事にした。
「ここがここの防衛部隊の詰め所ね。詰め所といってもかなり大きいわね」
橋の上の待ち伏せ部隊を蹴散らした後、紗江と大治郎はまっすぐここに向ってきたのだ。途中、小規模な部隊の攻撃があったが、難なくいなしてきたのだった。
「扉が閉まっているな。ここも待ち伏せか?」
そう言いながら、大治郎は刀を一振り。その一閃で扉は壊れ、中があらわになる。反撃の可能性を考えたため、崩れ行く扉の脇で様子を伺う。中の様子は不気味な程静かであり、敵の姿は見受けられなかった。
「このまま正面を行くのもつまらないな。折角だから二手に分かれるはどうだ?」
「そうね。左右別の所からいくのも手ね」
二手に別れ、この部隊の指揮官を探す事にした。必要な情報はクラル姫がどの方向にどのくらい前の時間に通ったかを知ればここで戦闘を行う必要はなくなる。
大治郎は川に沿って、紗江は街道に沿って詰め所の周りで忍び込めそうな所を探す。丁度、東と西から攻める形なった。大治郎が忍び込めそうな場所を探している時に、西側よりけたたましい喧騒が聞こえてきた。紗江が敵と遭遇して戦闘に持ち込んでいると思うが、おそらく、壁を無理やり壊したか、ばったり相手と出会ってしまったのどちらかだろう。
「止まれ!!止まらないと撃つぞ!!」
後ろから声がしたと同時に銃を突きつけられる感触。動きを止めて顔を向けると赤い銃を持ったツインテールに髪をまとめた女性・新米がいた。少し垂れた猫耳が特徴のようだ。
「何か用があるのかい?場合によっては何も見なかった、気づかなかった事にしておいた方がいい時もあるぞ!」
最後の言葉と共に回し蹴りを放しつつ、刀を抜きて斬撃を繰り出す。攻撃ではなく牽制の意味合いが強い動きだ。
「この間合いでは銃は不利だぞ。さあ、新人君どう動く?」
一目で相手が新人である事を見抜く大治郎の洞察力もさすがである。銃口の先端に刃を当てて射線をずらしている。これでは新米が引き金を引いても大治郎には当たらない。銃の反動による射線のぶれも計算済みだ。紗江がいると思われる方角で兵士の怒号や悲鳴が聞こえる中、お互いに身構えている。膠着状態になるかと思えたが上空から手榴弾が投げ込まれた。その爆風から逃れるため、お互い離れる。
「下がれ!新米(しんまい)」
新米の上官と思しき人物が叫ぶ。それにあわせて新米は、忍者が使うような隠し扉から内部へと消えていった。
続く
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