この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第三章・その7
『提督。敵を発見しました』
磯波から通信が入る。この前に、1隻だけのはぐれ駆逐イ級と遭遇したが、3人の一斉射撃で簡単に沈める事ができた。
『敵の規模は、軽巡ホ級1、駆逐イ級2、駆逐ロ級1の合計4隻です』
待ちに待った当たりだ。と斉藤は思った。
「戦闘を開始しろ。今回は全部、撃沈を狙うんだ」
『3人だと、単縦陣しかできないわね』
「別にその陣形に拘る必要はないぞ。3人だからトライアングルフォーメーションで行っても構わないぞ」
『何よそれ。そんなの聞いた事ないわね』
『あのー、もうすぐ、敵軽巡の射程に入りますが……』
「じゃあ最後に、俺達は船に乗って戦っているわけじゃない。船には船の戦い方、艦娘には艦娘の戦い方があるはずだ。既存の形に囚われるな。以上だ」
斉藤と大井の会話に磯波が割って入った。どうやら、斉藤の頭の中には既存の艦隊戦以外の戦法案があるようだ。
「15.5cm三連装砲準備はいいわよ。射程内に入ったならいつでも撃てるわよ」
「では、敵軽巡に1番近いイ級を狙ってください。まずは数を減らしましょう」
すなわち、かなりの確率で相手からの先制砲撃を受ける可能性が高い。だが、大井の15.5cm三連装砲の威力はイ級を一発で沈めるには十分だ。敵が接近してくるが、相手の軽巡から撃ってくる気配はない。どうやら、考えている事は同じで複数艦による砲撃を狙っているのだろう。イ級が一隻、大井の射程圏内に入った瞬間、15.5cm三連装砲が火を吹いた!砲弾の軌跡はイ級に目掛けて飛んでいき、爆発。相変わらずの雄たけびをあげて沈んでいった。
「一隻仕留めたわ。次は――」
3人は身をかがめ、太ももに備え付けてある魚雷を発射する。狙いは敵軽巡の進行方向だ。イ級の撃沈から間髪いれずに魚雷を発射されたのを見て、敵の足並みがずれた。ホ級とニ級が反撃に転じるも、3人がいる位置から大きく外れ、夾叉弾にすらならなかった。その相手が混乱している最中、磯波と潮がニ級に向って同時に砲撃する。訓練の甲斐あって見事命中。ニ級は沈んでいった。相手は魚雷を回避するためか、磯波達の方向に変えて迫ってくる。反航戦の形になった。相手は冷静さを取り戻したのか、ホ級の攻撃が大井を正確に狙ってきた。
「くっ!」
「大井さん!?」
「至近弾よ。前を見なさい!直撃じゃないから気にしなくてはいいわ!」
その時、ホ級とニ級が魚雷を発射するのが見えた。進路を乱して攻撃するか、それともこの海域から離脱を狙うのかのどちらかだろう。
「ねえ、ホ級は私に任せて、イ級を2人で沈めてくれない?あの魚雷が来た時が合図よ。左右に別れて行動するの」
「それでは陣形が崩れてしまいますよ!?」
「さっき提督が言ったでしょ?既存の形に囚われるなって。ホ級が砲撃の装填が終わる前に決着をつけるわ」
磯波は黙って頷いた。大井の目がこの間と違っていたからだ。鎮守府に来た時の、いつも妄想に耽っていそうなふざけた感じではなく、それなりの戦場の場数を踏んだ感じの目だったからだ。
「行くわよ!」
そう叫ぶと同時に左右に別れる。大井は一直線にホ級に向っていった。潮は驚いた表情で磯波を見た。
続く
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