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東都幻想工房

同人サークル・東都幻想工房の近況等を報告するブログです。 また、二次創作小説等も掲載しています。

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~艦隊これくしょん 佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:その14~【二次創作小説】

この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。

佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第三章・その3

 「それとこちらも聞きたい事がある。毎日支給される資材だが、当初聞いていた量より明らかに少ないのだ。今の日本における資材の輸入状況等は、自分が提督になる前とは変わっていないはずだ。中央で何かあったのか?」
 「ああ、その事か。実は斉藤がこの鎮守府に来る少し前に、首都を中心の海上防衛拠点の設備を強化するため、各鎮守府への支給素材を10%削減して確保する事が決まったんだ。それだけじゃない。その10%を基準として各鎮守府毎、密かにランク付けを行って支給素材をさらに絞っている。この状況を見る限り、ここは相当絞られていると思うぞ」
 「まったく持ってその通りだ。装備や艦娘を整えようとすると出撃できず錬度が上がらず、出撃すれば装備や艦娘が整えられない。鎮守府の修理とかで運営費も削られてしまうから食料すらもままならないのさ。干してあった干物を見ただろう?あれがここの鎮守府の主食さ」
 「しかし、この状況はどう見ても普通じゃないぞ」
そういうと菊地は何かを考え始めた。こんな状況を打破する何かいいアイデアでもあるというのだろうか。例えるなら野球の9回裏のスリーツーの状況でホームランを確実に打てる方法といった所である。
 「ここに俺の鎮守府に直結する連絡モニターをつけよう。物資や装備で必要な物があれば陳情するようにしてくれ」
 「そんな事をして大丈夫なのか?」
 「大丈夫だ。俺はこの佐世保管轄内でそれなりの位置にいる。まあ、艦娘達のおかげだがな。だが、他の上の連中に下につくよりずっとマシなはずだ。ただ、陳情できる物資のレベルは斉藤の鎮守府の錬度次第だ」
 どうやら菊地は、斉藤の鎮守府に専用の連絡回線を繋げてくれるようだ。ホームラン級の対案ではないが、物資の確保に一定のルートを持てるの心強い。補給が絶たれた部隊はどうなるかは、歴代の戦争内の話でご存知だろう。物資の補給の話が進んだ所で、磯波と潮の射撃訓練が終わり鎮守府に戻ってきた。折角の機会なので、菊地提督の所の翔鶴と演習を行う事になった。
 艦娘同士の演習においては艦載機の武装や魚雷、砲弾は特殊なペイント弾を使用する。ペイント弾の塗料も環境に配慮した特殊な塗料が使われているため、海の環境を汚す事もないクリーンなしくみとなっている。
 「ところで斉藤。今の日本の戦況はどう思う?」
 「深海棲艦との戦いだろう?良い言葉で表すなら膠着状態といった感じかな。沖縄本島が取られた事と小笠原から住民避難以降、悪化はしてないからな」
 「成程、たしかにそうだな。艦娘が配備されてから物資の供給ルートも安定したからな」
 「だが、連中の事だ。遅かれ早かれ、確実に日本にやってくると思っている。現に、艦娘が世に出てこなかったら、もう日本は無いだろう」
 「……斉藤がそう考えていて俺はうれしく思う」
 「俺も斉藤と同意見だ。連中が軍備を増強している今の日本の状況を黙って見逃している理由はない。特に、艦娘という存在が深海棲艦に対しての有効打になっている現状がある」
 「上層部はどのように考えているんだ?」
 「中央の情勢までは詳細はわからないが、俺達のような考えを持っているのはごくわずかだろう。佐世保鎮守府内でもそうだ。日本軍全体に楽観視または現状のままであって欲しいという願望があるのだろう。戦いから離れている一般市民にとっては繭の外の話に聞こえているだろう」
 斉藤には心当たりがあった。深海棲艦が現れて各国の沿岸地域を脅かし始めても、インド洋沖海戦で連合軍が惨敗しても、東南アジア海戦で惨敗して該当の国が深海棲艦のテリトリーになった状態になっても、マスコミや政治家そして市民の間では他人事である雰囲気を醸し出していた。沖縄が深海棲艦に襲われた時にやっと置かれている状況に気がついたという感じだ。だが、艦娘という存在が深海棲艦への有効打になるという事がわかった現在、今まで平和ボケ状態にあった日本では安堵の声が上がっていた。RPGでいうなら、主人公が最強の武器と防具を手に入れたという感覚だろう。しかし、沖縄は奪還どころか反攻すら起きてないのにもかかわらずだ。
 「愚か者は痛い目を見ないとわからないと言う事だな」
 「ああ。日本が危険という状況が見える特等席に座り続けているのは俺達ぐらいだ。他にそう見ていた人達は沖縄の海に眠っている。その内、大勢の市民がこの特等席に無理やり座る事になり、厳しい現実を突きつけられる事になるのさ。逃げられない現実を、だ」
 「こんな状況で連中が攻めてきたら九州、日本は大混乱。上層部は錬度が高い部隊を引き揚げさせるために、錬度が低い部隊に殿を押し付ける事は間違いないだろう。自分達の無策を前線の兵達に押し付けて、だろ?」
 「そうだ、その通りだ。斉藤、どんな方法でもいい。この鎮守府の艦娘を増やして、錬度を上げて、大きな戦果をあげるんだ。君やこの鎮守府の艦娘達が生き残るため、いや、この戦いを終わらせるために君達の力が必要だ。俺は俺の手の届く範囲の限りで最大限、手を尽くすだけだ」
 「九州に連中は必ずやってくる事ができるだけ遅い事を願うばかりだな」
 斉藤は深海棲艦が九州に攻めてきた時、どんな事が起こるかを考えてみた。平和ボケをした上層部だとしても、真っ先に市民を本州に避難させる事だろう。問題はその次だ。九州を取りに来た深海棲艦の物量を押し返せるような時間を連中は与えてくれないだろう。混乱の最中、錬度が高い艦娘達と陸軍と空軍の各戦力を本州に引き揚げさせるだろう。その他の錬度が低い部隊は捨て駒の時間稼ぎにされるだろう。胸糞悪い事が起きるのは確実である。
 目の前では磯波と潮がキャーキャー叫んでいる。翔鶴から放たれた艦載機に執拗に追い回されている。艦載機から放たれるペイント弾を浴びまくり、全身を塗料でベタベタにされてしまった。大敗である。

続く
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