東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第5章 赤きスープは火を吹くように辛い・その4
「成程。火炎瓶も煙幕も軍仕込か。包丁の扱い方もただの料理人とは違っていたからな」
基本的に、クリーチャーが日常生活において身近にいる日々であるため、どこの国でも教育の中で精霊銃の扱い方や格闘術等の簡単な物は身につける事はできる。一応、戦う事は可能だが、あくまでクリーチャーと遭遇した時に逃げる事を重点としており、発見した後は警察や軍等の組織が倒すが一般的な流れとなっている。より深く身に着けたいなら専門のクラブに入ったり、軍に入隊するといった具合である。
「それが分かった事で次はどうするのかしら?」
暁美はどこかしらから呼びの包丁を取り出し、二刀逆手の構えで身構えている。
「まとめて吹っ飛ばずまでさ!エクスプロード!!」
大治郎が火属性上級精霊術の名前を叫ぶ。上空から赤く、大きめの火球が降ってくる。それを見た暁美は、身を翻して回避行動をとる。
ドゴオオオォォォーーーン!!
火球が地面にぶつかった途端、爆音と熱風が辺りを襲う。
「きゃああああ!」
回避行動をとった暁美は逃げられずに爆風に巻き込まれて吹き飛ばされ、地面に叩きつけられてしまう。身を起こした暁美はあきれたような表情で、
「ちょっとちょっと!上級系を詠唱時間無しで放つのは無いでしょう!」
「長くやっているからできるようになるんだ。まあ、威力は結構下がるがな」
「こんだけの威力で低いというのはどうかと。ちゃんと詠唱したらどのくらいになるのかしね。もういいわ。私の負けね。例のお姫様。今頃、鴨川のお城にいると思うわよ」
「鴨川のお城?それはこの国の首都にあるお城の事か」
「そうよ。何か大事な話をしているんでしょ。私達のような“一般市民”に多少影響がある話とか」
暁美はエプロンについた砂をはたき落としながら答えた。
「鴨川だったら比較的近いわ。今日中にはカタが付きそうね」
「待って。行くのはいいけど、先に代金を払って頂戴。場所は教えると言ったけど、代金はタダにすると言っていないわ」
よくよく考えてみれば、大治郎達には支払う金額が増えるだけの罰ゲームみたいな物であった。
【登場人物紹介・その4】
・勝浦 暁美(かつうら あけみ)
・性別:女性
・誕生日:1月24日
サウザント・リーフ王国の首都から東にある“カツウラシティ”にて食堂を経営している元軍人さん。包丁捌きや精霊術は軍隊仕込み。彼女の手料理はとてもおいしい。彼女が経営している食堂は、昼間は食堂だが夜になるとパブになる。食堂よりもパブの方が有名で、遠方からはるばるやってくる人もいる。父親が先代時代の宮廷料理人だったため、城で料理人をやらないかと誘われている。ただ、本人はもう少し大きな街でお店を構えたいと考えている。
第6章へ続く
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