東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第6章 突撃した所はハズレでした。・その1
サウザントリーフ城。そこはサウザント・リーフ王国の南側にある、首都・安房鴨川に建設されている王族の居住地である。普段であれば、城の一部は一般の人も入れるようになっているが、今日はそのような穏やかな雰囲気は一切なかった。城に入る艀は上げられ、異様な緊張感を醸し出している。艀を境に自総研の2人と城に篭っている兵士と睨み合いが続いている。
「やっぱりここまで来ちゃったわね。まあ、予想通りといえば予想通りね」
「ここに“真実”があればいいんだがな」
“真実”。ここに来るまで大治郎は度々疑問に思っていた。革命に成功はしたものの、その反動で財政難による経済危機が起きているこの国が、他国の、それも日本の中で1、2を争う程の国力を持つ国の国家元首を、物騒な置手紙と共に連れ去っていったメリットは何なのだろうか。それとも、わざと自分達が来るように仕向けられているのか。自分達が出張って来る事で1番得をするのは誰なのだろうか。そういった疑問が常に付きまとっていたのである。
「帰れ!帰れ!あんた達に何も依頼をしてないぞ!!」
実際そうではあるが、2人が探しているクラル姫は間違いなくこの城のどこかにいるのだ。クラル姫を連れ戻すには城の内部に突入する必要がある。
「兄さん、パンフレットによると上層階か地下が怪しいと思うの」
勝浦のお店に置いてあったサウザントリーフ城のパンフレットを持ってきたのだ。観光として一般開放されている場合は大まかの構造が把握できるから非常に便利だ。
「地下の空間には載っている以外の施設が多そうね」
「なら、最初は地下から調べていくか」
そういうと大治郎は艀周辺にいる兵士に向かって
「ここにクラル姫がいることは分かっている!我々はクラル姫を連れ戻しにきた!警告はしておく!怪我をしたくないなら、武器を置いて壁際にでもいる事だ!」
そう言うと、精霊銃を艀にむけて一発撃った。その音はこれからの戦いの合図であるかのように。
続く
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