この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第7章・その4
「何?風呂で気絶してた?」
磯波から入渠していた金剛について報告が入る。先程けたたましい悲鳴が入渠施設から聞こえたため、様子を見に行かせたのだ。
「はい。どうしましょうか」
「下手に動かすのはまずい気がしないでもないが、起きるのを待つしかないだろうな。まあ悲鳴を出せるほど回復したなら、身体的には問題はなさそうだな」
金剛が目を覚ますまで引き続き待つことにしたのだが、その後、3回悲鳴と気絶を入渠施設で繰り返し、斉藤達と邂逅するのに丸1日要する事となった。
「No・・・。信じられまセーン」
邂逅一番、ここが鎮守府である事を告げられた金剛が発した台詞だった。
「目を開けたら、オンボロな屋根が真っ先に目に入りましたー。それにアレはなんですか!?新しい魔除けか何かデスか!?」
金剛が窓の向こうに指をさす。その先には潮が捌いた魚が吊るされているのが見える。おそらく干物を作っている所を見たことがないのだろう。
「一体あの魚達は、生きている時にどのような罪を犯したというのデス!?そして私にはどのような罰が!?」
罰という言葉を聞いて、斉藤と磯波はあっけに取られた。どうやら彼女は大きな誤解をしているようだ。この鎮守府を地獄とでも思っているのだろうか。
「What?ここはヴァルハラでもないんデスか?」
当たり前だ。こんなオンボロな鎮守府で各資材や食料等も物資も満足に支給されない上に、居住環境レベルも風雨をしのげる程度の見かけだ。最初から一部の機材は壊れているか異様にボロかったりしている。その中で電気やガス、そして給料がきちんとしているのが奇跡に近い。
「NOooooooo!!」
頭を抱えて大声で叫ぶ。動作がいちいち大袈裟だ。この金剛という艦娘はこうなのだろうか。大井に今度聞いてみたら何かわかるかもしれない。
「ううー。あまり文句は言えないけど。これならヴァルハラの方がマシな気がしマース。でも、ティータイムをまた楽しめるから仕方ないデス」
「ティータイム?ここには紅茶はない。メインは干物だ」
「Hi・mo・no?それは何デスか?」
「さっき魔除けといった魚の事だ。あれを食べるんだ」
「Oh My God!」
資料によると金剛はイギリスから帰国子女的な感じの艦娘であるという。実際の“金剛”はイギリスで作られた後、日本にやってきたという経歴を持つ。幾らなんでもイギリスにも魚料理はあるだろう。干物があるかはわからないが。
3時になった。何処からともなく香ばしい匂いが漂ってきた。潮が作った特製タレが染み込んだ干物を焼いているのだ。普通3時のおやつといえば、スーパーやコンビニで売っている御菓子に舌鼓を打つのが普通だろう。しかし、佐潟鎮守府は違う。干物だ。ここではお菓子の変わりに干物をつまむのである。毎日マシュマロを焼くが如く、干物が焼かれる。
「Oh,NO!これでは高血圧になって死んでしまいマース!ここはやはり、紅茶等を嗜むべきデス!」
「そんな事を行っても紅茶が売っているお店はコンビニくらいなものだぞ」
「じゃ、じゃあそのコンビニに買いに行くデス!」
斉藤がコンビニがどこにあるか地図を見せて指し示すと、またもや悲鳴を上げ、
「ここは文明から切り離されていマース!!」
と叫ぶ。コンビニが近くにないだけでそこまで表現するものだろうか。やはり大袈裟である。いつまでも騒がれてても困るので、金剛にお金を渡して軽トラで買いに行かせた。
続く
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