この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第7章・その2
「戦艦が一隻行方不明になった?」
日報を見ながら斉藤が声を上げた。撃沈なら戦闘でやられた事が想定できるが、行方不明というのはいささか妙だ。
「この間の嵐がかなりの広範囲に及んだらしく、その嵐の範囲に遠征中の艦隊が巻き込まれた影響のようですよ」
「かなり珍しい事が起きたみたいだな。これはひょっとしたら光明かもしれないぞ。後で、該当海域の情報を集めてみよう」
サルベージに行こうとも今の鎮守府は、先日の大嵐によりいくつかの窓ガラスが割れ、執務室は雨漏りをし、プレハブ艦娘寮は屋根から何か外れるような音がし、風雨に中がさらされるといった悲壮な状態に陥っていた。各艦娘はそれぞれの鎮守府の修理に当たっていたため、その他の活動を行うには人手が足らなかった。後に斉藤が地元の漁師達に聞いた所、該当海域の海底は何故か岩がゴロゴロして網をしかけるには不適だと言う。潮の流れも比較的落ち着いているので、重量があるものが沈んだ場合、あまり海底を動く事はないらしい。かといっても今回は撃沈ではなく、行方不明扱いなので該当の海域から外れている可能性がある。翌日、大井を除いた3人に該当海域の見回りと称して魚群探知機を持たせ、行方不明地帯周辺の海底の情報を集めてもらった。それから3日後、金剛が所属していた鎮守府は捜索をあきらめたらしく、所属から外されていた事を確認した。
「また、夜釣りなの?物好きね」
「こんな格好は初めてですが、似合ってますでしょうか」
「似合っているもないも、地味すぎる格好よ」
沈没艦娘引き揚げ作戦の事を大井は夜釣りと呼んでいた。そんな大井をよそ目に初参加となる鳥海はいつもと違う格好に新鮮味を感じていたようだ。
「船長。今日はどこの漁場に出かけるのでありますか?」
いつもと違う口調で斉藤に声をかける潮。その様子をみて鳥海はさらに驚いていた。
「今日の漁場はここだ!」
斉藤が大きな紙を壁に貼りだした。紙には佐潟鎮守府を含む周辺の海域が描かれた地図である。
「この数日、君達に魚群探知機を持って該当の海域に出撃してもらった結果。今回、我々が釣り上げるターゲットはこの辺りにいるのではないかと絞る事ができた。また、この辺りは遠征任務という現在の我々とは無縁の業務に追われている艦娘達がよく通る地域との事。つまり、今回1番注意しなければならないのは、友軍の艦娘達となる。もちろん深海棲艦もだ」
「質問」
「何だ、大井」
「今回も偽装漁船に乗り込んで行くのはわかったけど、あの装備は何?」
大井が指差した方向には偽装漁船があるが、今回は釣竿のような物が船の四方八方に括りつけられている。見た感じでは一本釣り漁船に見えるだろう。
「あの装備で伊勢海老釣りに誤魔化してるのかしら?」
「その通りだ。該当の海域の海底は底引き網とかには不向きな岩だらけで凸凹しているという。ちなみにアレは、釣竿のような物に偽装しているだけで魚を釣る機能はない。他に質問はあるかな」
斉藤が聞き返した所、新たな質問は出てこなかったため、夜の闇が広がる海原と偽装漁船は出港していった。なお、鳥海は明石が点検をしていたマジックハンド等を見て、本当にアレで自分が引っ張り上げられたのかと終始疑問に思っていた。
続く
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