この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第7章・その5
「やっぱり紅茶は最高デ~ス」
コンビニから戻ってきた金剛は、食堂兼調理場で舌鼓をうっていた。安物の紅茶パックではあるが、今の彼女にとっては飲めないよりはマシなのであれでいいのだろう。干物の香ばしい匂いとは違った香りが鎮守府に漂う。金剛が出かけている間に大井に金剛の事を聞いてみた所、前の鎮守府には金剛はいなかったが、その姉妹艦の“比叡”がいたという。ただ、何かあれば姉である金剛の事を言っていたという。聞いた所、やたらと金剛の事を褒めまくり、うんざりするほど語ってくれた。もちろん紅茶も飲むだが金剛がいないと味気ないとボヤいたそうだ。菊地にも連絡を取ってみた所、まずは戦艦が来た事を喜んでくれた。金剛は菊地の鎮守府に所属しており、3食よりも紅茶を飲む事が大好きである。放っておくと自分で焼いたスコーンと一緒に四六時中紅茶を飲んでいる事もあるらしい。どうやら、金剛の紅茶好きは標準設定で料理スキルもあるらしい。提督に対する友好度も高く鎮守府内が一気に賑やかになる事は間違いなく、戦闘面でも“高速戦艦”の足の速さをいかして動いてくれるという。重巡より長い射程を持つ35.6cm連装砲であれば、空母や戦艦の装甲にも対応できるようになる。新しく進行が許可された海域で空母に遭遇したとしても、相手の艦載機が飛べないくらいの損傷を与えやすくため、対抗しやすくなった。次の海域への出撃へ策を考えていた所、食堂兼調理場の方から派手な音が聞こえた。
「What!潮、ど、どうしたデスか?」
食堂兼調理場のドアを思い切り開けた潮は何やら肩で息を切っていた。衝撃でドアの蝶番が外れかかっている。
「あなた!この匂いは何ですか!?私が作った特製のタレが染み込んだ干物が食べられないと言うんですか!!」
潮の手には香ばしい香りを放つ干物があった。それを見せ付けながらジリジリと金剛ににじり寄る。身の危険を感じた金剛は、紅茶が入ったカップを持ちながら席を立つ。
「お、落ち着くデース!そんなつもりはないデス!」
「ほお?じゃあその手に持っている物は何ですか!?しかも干物を吊るしている所を魔除けとか言いたい放題言ってましたね。聞こえてないと思ったんですか」
潮は干物と干物につけるタレに何故か非常に強いこだわりを持つ。干物を貶されたと思ったのだろう。
「ワ、ワタシは単に紅茶が好きなだけデース。べ、別に魚が嫌いと言った訳では・・・・・・」
「では、干物を食べてくれるのですね。この干物の素晴らしさをたっぷりと教えてあげます!潮、参ります!!」
天井に届きそうなくらい高く飛び上がり、両手に持った干物を金剛に向けて投げつける。金剛は間一髪それを避けたが、干物は床に突き刺さる。
「What!?それは干物とは思えません!」
「何を言っているんですが、私が干した干物は深海棲艦の装甲すら切り裂きます(ためした事はない)。さあ、後はもうありませんよ」
「て、テイトクー!助けてください!テイトクー!Help me!」
その叫びは届かず、金剛の口に干物が無理やり押し込まれる。金剛はその場に崩れ落ちた。瞬く間に静寂が訪れ、金剛の口にコレでもかと干物を詰め込んだ潮の顔には達成感が浮かんでいた。潮が窓に顔を向け、青空と青い海を見つめる。窓から入りこむ風は干物ような潮の香りを運んでいた。
第8章へ続く
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