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東都幻想工房

同人サークル・東都幻想工房の近況等を報告するブログです。 また、二次創作小説等も掲載しています。

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東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】第8章・その2

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第8章 VS お姉ちゃん・その2

 「準備だけは入念にしてあるようだな」
 サウザントリーフ城に再び訪れた大治郎と紗江は、城内の入り口佇んでいた。この間とうって変わって城内はガランとしていた。色々置いてあった展示物等は全部どこかに片付けられてしまったようだ。これでは、上下左右遮蔽物になる物がないため、集中砲火を浴びる事は確実である。さらに、ご丁寧に2階部分からは大勢の兵士が、正面には印旛地区で戦った逆井と酒々井街道で戦った新米が構えている。攻めてこないのは、城内に2人が1歩でも足を踏み入れた時に戦闘を開始するように指示が出されているのだろう。考えてみれば、最寄の駅を通りがかった時に、ご丁寧にサウザント・リーフの兵士がここまで案内してくれた時点で疑うべきだった。明らかに別の意味で歓迎されている。
 「・・・・・・いっその事、踵を返して帰るか」
 「そうね。ここから請求書だけを投げ入れて帰ろうかしら。請求書のコピーをカズサに渡せば済むし」
 「ちょっとそれだと私達が困るのよ!いや、このまま戦闘するのも嫌だけど!」
 「一応、仕事ですからね。このまま戦っても私達が勝てる確率があるんですかね?」
 「そうね。私達に手紙を寄越してきた“ソフィア”という人物にいい様に使われているのも癪だわ」
 事実、ここにいる全員がソフィアという人物に振り回されているのだ。ただ、ここで踵を返して帰ってしまうと、この分の依頼料(2人はそう解釈している)を減額しなければならなくなる。さて、どうするか。
 「ねえ、兄さん。このまま帰るのも戦うのも癪だわ。例の方法をとろうと思うんだけどどう?」
 「例の方法?ああ、あれか。いっその事やってみる・・・か!」

バンッ!

 “か!”という言葉と共に、紗江と大治郎が精霊銃を撃つ。その弾は新米にHITする事態が発生した。ゲームで例えるなら、画面に半分だけ映っている相手に撃つと同じ事である。戦闘開始の合図は、2人の騙まし討ちで始まったのであった。

続く
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東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】第8章・その1

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第8章 VS お姉ちゃん・その1


 クラル姫がサウザント・リーフ王国に連れて行かれた騒動から一週間が経った。この一週間で桜の花が咲き、春が訪れていた。大治郎と紗江の迅速な活躍により、イースト・ペイジング王国内でクラル姫が連れ去られた事を市井の人達にほとんど知られずに済んだのであった。ただ、何故このような事態になったかまでは判明せず、月崎やセレスが言っていた事が未だ引っ掛かっていた。
 「いずれわかると言われてたが、こうも手がかりが無いとな・・・」
 あの後、壊滅したという貴族連合の残党の仕業という線を調べたが、その可能性は皆無に等しかった。何故ならば、すでに貴族連合のほとんどは死亡しており、ごく僅かなメンバーと家族が遥か南の流刑地へと送られたか、サウザント・リーフ国内で厳重に監視されている状態であった。
 「そうそう昨日、セレスに会ってきたわ」
 「あの精霊術師か。この間の一件の事でも話してくれたのかい?」
 「ううん。話といえば私の陰陽術についてよ。かなり興味が有るからどういうの物か教えて欲しいってせがまれたのよ。まあ、実際に扱うのはダメだから、御札とか見せてどういうものか教えて上げたわ。ただ・・・」
 「ただ?」
 「途中、誰かに見られていた感じがする。いや、誰かが観ていたのよ。何か私の事を知ろうという感じの視線を感じたわ」
 大治郎や紗江は、長年の戦いの経験から気配にとても敏感だ。気配を感じるだけで、それなりのレベルまでの相手なら、位置くらいは特定できる。
 「おそらく、察知されるのは予測済みでわざと出てきたと思うわ」
 この命知らずと思える相手はどんな人間か議論を交わしていた所、局長が客人を連れてきたと部屋に入ってきた。
 「よお」
 「誰かと思えば、カズサじゃないか。こっちに来てたのか」
 「ああ、クラル姫に今後の我が国に対するイースト・ペイジング国からの支援について話し合ってきた所だ」
 「経済支援の話よね?注意したほうがいいわよ。あの姫さん、かなりのやり手だから見返りと称して骨の髄まで搾り取られる可能性があるわ」
 「ああ、それは昨日の会談で痛感したよ。先日、城に来た時とはまるっきり目つきが違ったからな」
 「それで、自総研には何をしにきたんだ?愚痴を零しに来たとは思えないな」
 「ああ、これを渡して欲しいと頼まれたから持ってきたのだ」
 カズサが懐から出したのはやたらと綺麗な封筒であった。プリントされている物がサウザント・リーフ王国の国章であるため、親書等に使われる物だろう。封筒の中身を見た所、書類が入っており大治郎はそれに目を通した。
 「何て書いてあったの?」
 「見てみろ。おもしろいぞ」
 「なになに・・・。・・・・・・・・・・・・・。この間はご苦労様でした。おかげで我が軍の錬度がどのくらいであるか貴重なデータがたくさん集まりました。そして、今回は国中の精鋭部隊を集めておきました。この手紙が届く頃には準備はできてま~す。ソフィア・リーフ・サウザンより。P.S.あなた達が来るまで、カズサを国に入れないように命じておきましたぁ!何よこれ!私達は何!?訓練の教官扱いかしら?」
 「それに一国の国家元首でカズサ君が、自分達が行くまで国から締め出されてしまったのだ。君を国に入れなくする事ができる権限を持つのだから王族の関係者だろ?このソフィアという人物は」
「ソフィアは私の姉だ。腹違いであるが」
やっぱりそうだ。今回の騒動の首謀者はこのソフィアだ!
「隠し子とか腹違いとか今はいいわ。今回の騒ぎを起こしたのはこのソフィアってヤツに決まりね!この迷惑料とかふんだんに盛り込んだ請求書を叩きつけにいってやるわ。私達が安くないという事をしっかりと教えてあげるわ!」
 そういうと請求書に金額を殴り書き、飛び出していった。
 「仕方ない。カズサ君、君は行って国に入れないだろう。変に恥をかくわけには行かないから、この件が終わるまで、ここにいた方がいい。局長に行って貴賓室を開けてもらうよ」
 カズサを貴賓室に残し、大治郎は紗江を追いかけていった。

続く

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】第7章・その6

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第7章 いわれなき大騒動・その6

 「成程、それであなた達が飛んできたわけね」
 夜。サウザント・リーフ王国からイースト・ペイジングへ向かう特別列車の中でクラル姫が頷いていた。大治郎がカズサに大技の“抜切”を叩き込んだ後、タイミングを見計らったように現れ、この勝負に終始部をうったのであった。抜切を叩き込まれたカズサは身を起こす事もままならなったため、月崎とセレスに肩を貸す形となった。それもそのはず、峰ではなく刃で斬りつけられた場合、確実に上半身と下半身がサヨナラしてしまう程の破壊力を持っている。そんなボロボロの状態のカズサに対して、クラル姫は帰る事を伝えたのだ。元から時間も決まっていたらしく、3人が乗っている特別列車も手配されていた物であった。
 「でも、変な話ね。カズサちゃんとは内密だけど事前に何をするかは打ち合わせておいたのに。誰かに担がれたんじゃないのかしら?」
 「そうだとすると、自分達を呼び出してサウザント・リーフ王国と戦わせる事でメリットを得る人物がいたという事か」
 「カズサちゃんが国王になるまでに存在していた貴族連合という組織の生き残りかしら?」
 「それはないだろう。月崎やセレスの反応だと、どうやら王国の上層部に犯人がいるようだ。言ってしまえば、最初からサウザント・リーフ王国に行くことを城内の誰かに伝えておけば、大事にならずに済んだ事はたしかだ。それで物見遊山の結果はどうだったんだ?」
 「物見遊山とは結構な言い方ね」
 「ホフェデ、ヒャンカフウヒャクハ?」
 紗江がいつの間にか手に入れていた弁当を食べながら収穫はどうだと聞いてきた。
 「もちろん、収穫はあったわ。この国の医療技術は、私の国よりも発達しているの」
 サウザント・リーフ王国の医療技術は、精霊術の回復系をメインに導入した先端医療が展開している。王国を牛耳っていた貴族連合が残した唯一のまともな遺産であった。回復系の精霊術はかなり高度でそれを扱う術師、そしてそれを導入した機械の開発には非常に費用が嵩む。サウザント・リーフ王国の経済が疲弊した要素の1つでもあった。
 「経済支援を申し出ているから、それの見返りはきっちりもらわないと。この医療関係の技術を貰おうかしらね」
 「クラル姫の頭の中では、もう組み立てができているみたいね」
 「この国に広がっていた暗雲は晴れたわ。いくらでも良い方向に伸ばす事ができる。ここから先は政治の話ね。あなた達は手紙の主をどうするか考えた方がいいと思うわよ」
 星空が輝く夜空の下を、三人を乗せた列車は西へ向かう。手紙の主は一体誰なのか。何のために、自分達を呼んだのか。色んな考えが浮かぶが、今はクラル姫を送る事だけを考え、視線を外に向ける。窓から見える夜空の星がいつもより綺麗に見えた。

第8章へ続く

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】第7章・その5

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第7章 いわれなき大騒動・その5

 「そろそろ、決着をつけるか。もうすぐ、夜になるからな。その前に済ませたいものだ」
 「では行くぞ!ガイアミサイル!」
 上空から無数の鋭角な結晶が大治郎を狙って降り注ぐ。しかし、この精霊術は対象がいた地点に狙って降るという特性があるため、どんなに発射数が多くても対象が動いてしまえば、簡単に外れてしまう。自機狙い弾といえば説明しやすいだろうか。
 「アクアレイザー!!」
 カズサは丁寧に精霊術の名前を告げてくれるので解説がしやすい。カズサを中心として3方向に水塊が発射される。これもガイヤミサイルと同様、相手のいる位置を狙って発射されるタイプだ。どれも地属性と水属性のポピュラーな精霊術だ。
 「攻撃の種類が単調。それでは誰も当たってくれないぞ」
 いくら熟練度が上がって、同一発射数が増えても何の工夫もなく自機狙い系の攻撃をしてもまず当たらない。自機狙い系の攻撃は、他の攻撃と連携させた方が当てやすい。何もせず当たってくれるのは、動きが鈍い相手もしくはクリーチャー位のものである。
 「ならば、これならどうだ!?」
 上空から無数の木の葉が降り注く。それは発生した風に吹かれ、大治郎に迫る。木属性と風属性の複合精霊術であることは確かであるが、独自にあみ出した物のようだ。振り払う火の粉をはらうように木の葉を弾く。ただ数が多いため、どうしても隙が生まれてしまう。
 「フンッ!」
 刀で木の葉をはじいて時に先ほどの正拳突きを大治郎にあてる。木の葉を刀で弾いているため、左手で防ぐのが精一杯であった。直撃ではないがダメージを受けたのは確かだ。
 「おお、一発当てたぞ!」
 「一発じゃだめよ。ここで手を止めたら手痛い反撃を喰らうわよ。相手は百戦錬磨以上の自総研。クリティカルなんてもらったら一撃でやられる事は確実よ」
 いつの間にか、傘をさして風に舞う葉を防いでいるセレス達が感想をこぼす。その間も木の葉は降り続けている。
 「兄さん、この精霊術はフィールドに影響を与えるタイプね。術者が止めるか、あるいは倒さない限り止る事はないわ。受けるダメージは微々たるものだから、あまり気にしなくてもいいんじゃないかしら?」
 「そうかそれなら、早く止めるとするか。掃除も大変だろうし」
 精霊術なので、止めたりすれば木の葉は消える。
 「そろそろ終わりにするか。来い。最大の技でかかってきな」
 木の葉が舞う中、それをものともせず刀を構える。まさに威風堂々。
 「いいだろう!私の中の全力を受け止められるか!!」
 勢いよく踏み込んだカズサであったが、次の瞬間、玉座に向けて吹っ飛んでいった。

続く

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】第7章・その4

東都幻想物語~ Touto Genso Story Episode Ⅲ ~【小説版】
第7章 いわれなき大騒動・その4

 振り下ろした刀を手甲が受け止め、動きが止まる。受け止めた時の衝撃により、カズサのマントや大治郎の服が靡く。一瞬の静寂が訪れた直後、刃を滑らせるように大治郎の刀を捌き、踏み込みと同時に掌底を突き出す。
ドンッ!
 カズサを中心に音が発せられ、大治郎が後ろへと飛ばされる。
 「翔波拳!」
 カズサが両手の掌を突き出すと同時に青色の気弾を飛ばす。周囲に衝撃波を発し、相手を弾き飛ばす気合砲と気弾を放つ翔波拳だ。特に翔波拳は格闘技としてはポピュラーだ。格闘を戦闘の術とする者なら誰もが最初に覚えるほどだ。その影響か派生技も多く編み出されている。
 「さすが王と言われるだけであるな。何か、そう、特別な流派の格闘術を扱っているようだな」
 「左様。私が扱う格闘術は代々、祖先から受け継がれてきた流派。サウザント流といえばいいかな。行くぞ!」
 そう叫ぶと同時にすばやく距離をつめ、正拳突きを繰り出す。その動きに大治郎は素早く身を翻し、回転させながら斬りつける。遠心力をかけたカウンター攻撃である。しかし、その動きをカズサは予見していたのようで、前方にそのまま飛び込み低い姿勢から昇炎脚を放ってくる。お互いに攻撃を繰り出せば防御という行動を繰り返しの撃ち合いが続いた。
 (あのカズサという王様の動き。少し攻めという形じゃないわね)
 先程から戦闘を見学している紗江はカズサの動きを注視していた。大治郎とカズサ、それぞれの攻撃の比率を表すなら大治郎が4回攻撃する間に1回攻撃の動作を行うのだ。だが、ただ4回動く間に1回しか動けていないわけではない。その間はずっと防御に徹しているのだ。
 「ちょっとセレス。このままだと、一方的に押し負けてしまうぞ。あの距離での攻防だと精霊術も使えない」
 「なら、どうするの?乱入でもする?私達が出た所で五分五分になるかどうかも怪しいわよ」
 「こそこそしてないで出てきたらどう?」
 謁見の間の脇で覗き見をしていたセレスが突然、胸倉を掴まれ引き摺りこまれる。
 「見学するのは自由だけど、邪魔をする気なら私があなた達を叩き伏せるわよ」
 紗江に睨まれ、2人は大人しくなった。
 「いつの間にかギャラリーが増えたようだな」
 「そうだな。そっちは俺の攻撃を極力防いで、こちらのスタミナ切れを狙っているようだが、生憎その手は通用しないぞ」
 実際、大治郎は激しい撃ち合いでも息を全く切らしていない。
 「どうやら、腕の1本や2本ではなく、足の1本までも覚悟しないといけないようだな」
 「そろそろ、決着をつけるか。もうすぐ、夜になるからな。その前に済ませたいものだ」

続く

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