この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。
佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第二章・その4
午後。佐潟港から2人の艦娘が沖合いに向かっていった。近海警備の任務に磯波と潮が向ったのだ。
「お昼に食べたお魚おいしかったですね」
「わ、私、5本も食べちゃいました。ね、眠くならないといいんですが」
佐潟鎮守府の食糧事情が悪い事を感じている2人であったが、仮眠から眼を覚ました時に調理場から漂ってくる香ばしい香りがするとは思っていなかった。ただ、それでも食料事情が悪い事は変わりなく、しばらくは干物が毎食出てくるような状況だそうだ。きっと今も斉藤が魚を干物用に捌いているだろう。
「干物でしたら白ゴマをふってから焼いて食べたいですね」
『聞こえているぞー。今は任務中の上にいつでも敵が現れてもおかしくない所にいるんだ。気を抜くとやられるぞ』
通信機から干物を作っているはずの斉藤の声が聞こえてくる。
「ててて、提督!聞いてたんですか?」
『ばっちりとな。まあいい。これからこちらの事を作戦指令本部、もしくは本部と呼称する。自分も常に執務室にいるとは限らないからな』
『提督。衛生からでは周囲の敵艦等の情報は正確には入りません。通常では偵察機や電探を使って反応を探すのですが、今はそれらの装備もないため、目視か艤装に備え付けてある簡易レーダーで探す必要があります』
『よし、2人とも敵を探すんだ。今回の目的は実戦経験だ。深海棲艦を1隻でも撃破するんだ』
「了解です!」
通信を終え、2人は周辺の海域を周回する事にした。二線級の海域であるが出る時は出てくるためだ。30分ほどだろうか、穏やかに揺れる水面に黒い何かが移動するのが見えた。海上で細長い黒い物体が移動していたら、それは間違いなく深海棲艦である。
「て、提督!敵艦を発見いたしました!」
『こちら本部。敵の数は!?』
「駆逐艦と思われるのが1隻です」
『1隻だと?何か妙だな。はぐれた奴とたまたま遭遇みたいだな。丁度いい相手だ。まずはそいつを撃破するんだ』
「了解!」
通信が終わりが艤装を構えたと同時に相手もこちらに気がついたようだ。転回し、一直線にこちらに向ってくる。
グゥオオオオオオォォォォーー!
「なんか、怒っているように見えるのですが・・・・・・」
『こちら本部、接近されると何かと厄介だ。射程圏内に入ったら、一斉に砲撃しろ!奴の鼻先に叩き込んでやれ!』
送られきた映像から中型の駆逐イ級と判明。艦娘が相手にするのは丁度いいサイズである。主な攻撃手段は口から砲弾と魚雷を発射する事に加え、肉薄した時の攻撃手段で噛み付きも行ってくる。噛み付きの場合、普通の人間は噛み千切られてしまうほどの力が備わっている。もちろん艦娘の場合、艤装も無傷とはいかない。単体ではさほど苦にならないが集団で現れると多少、厄介になる場合がある。まれに大型の個体もいる事が確認されている。なお、大型の駆逐イ級を倒した際のサイズも残されていたりする。
オオオオオオオォォォォォ!
雄たけびを上げながらイ級は一直線に突き進んでくる。2人は12.7cm連装砲を構え、イ級が射程内に入ってくるのを待つ。
3、2、1。ドーンッ!!
磯波と潮の12.7cm連装砲が同時に火を吹く。放たれた砲弾は一直線にイ級へと吸い込まれた。
ボゴォォォォーーン!
ゴオオオォォォォ!!
放たれた砲弾は、イ級の頭に直撃!爆発音と共に断末魔の叫び声を上げ、海に沈んでいった。
「本部!やりました!敵を撃破しました!!」
『こちら本部。よくやった。これでこの鎮守府の初陣は勝利で飾れたわけだな。だが、まだ哨戒任務は終わったわけではない。喜ぶのは鎮守府に戻ってからだ。もう少しこの付近の哨戒を続けるのだ』
「了解しました。引き続き哨戒任務を続けます」
斉藤は、今回のイ級は頭が悪くてよかったと思っているが口には出さなかった。いくらなんでも、身構えている相手に一直線に突っ込んでくるのは自殺行為としか思えない。敵といえども少しは頭を使ってもらいたかった。
続く
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