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東都幻想工房

同人サークル・東都幻想工房の近況等を報告するブログです。 また、二次創作小説等も掲載しています。

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~艦隊これくしょん 佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:その25~【二次創作小説】

この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。

佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第四章・その5

 漁船の警護、出撃の日々が幾日か続いたある日、明石より例の船の改修が終わったと報告が入った。早速、斉藤が港に見に行ってみるとあのボロボロで廃棄寸前の屋形船が、見事ピッカピカで新品同様の船が出来上がっていた。
 「今回の改修は、かなりの大手術でしたよ」
 明石が自慢げに話すが、船の周りには多くのコロボックルが倒れていた。おそらく、改修作業で体力を使い果たしたのだろう。しばらくの間は工廠の稼働率は下がるだろう。
 「頼まれた通りに塗装は海上や夜間で視認しにくいよう迷彩柄に、後はエンジンですがかなりいいエンジンがついてきたので、駆逐艦の艦娘並の速度、いやそれ以上の速度が出ますよ。ただ、装甲については漁船に見せかけるため、あんまりないのでそこだけは注意してください」
 「ああ、今はこれだけでも十分さ。さらに改装を行う余裕はありそうだな」
 「そうですね。装甲の強化にあわせてエンジンの出力。鋼材に余裕が出た時にでも指示を出してくれれば作業に入りますよ」
 「そうだな。あとはこれを明石に渡しておこう。向こうに無理を言って揃えてもらった。例のクレーンにつけられるようにしてくれ。200m以上の所に耐えられるのを揃えるのは少し苦労したがな」
 明石に渡されたのは、防水ハウジングにセットされたウェアラブルカメラだった。さらにライトもついている。明石はそれを受け取って目を輝かせていた。これで斉藤が考えている事に対しての準備が整った。後は大淀からの報告を待つだけとなった。
 「提督、これを見てください。」
 船の改修が終わって数日後、大淀から一枚の通信文書が渡された。昨日の交戦結果についての部分だ。斉藤が書類に目を通すと撃沈項目に重巡の項目が記載されていた。佐潟鎮守府から比較的近い海域であるが、司令部から交戦許可受けていない区域である。戦艦や空母系の深海棲艦が出没するのは当然といった具合だ。今の佐潟鎮守府の戦力でこの海域に攻め込もうというならボロボロにされるのは火を見るより明らかであった。
 「よし、近日中にこの沈没地点に出発する」
 「えっ!?」
 斉藤から発せられた言葉を聞いた大淀と磯波は素っ頓狂な声をあげた。
 「提督!いくら何でも現時点の戦力で出撃するのは無謀すぎます!」
 「出撃?何を言っているんだ、俺は出発すると言ったんだぞ。ボロボロの屋形船を改修して偽装漁船迷彩塗装仕様にし、明石がハンドタイプの新しいアームを作って、海底撮影用のライト付きカメラを渡した。これから何をするのか、大体の察しはつくだろう?大淀、この沈んだ重巡の体重はどの位だ?」
 「た、体重ですか?それをどうするんですか?」
 「どうするって何も。海は潮の流れとかあるんだぞ。その手に詳しい人達にどのくらい影響を受けるか聞いてくるんだ」
 大淀から重巡の重さを聞いた斉藤はそそくさとどこかに出かけて言った。斉藤が出かけてから少しの間、磯波と大淀は唖然と立ち尽くしていたが明石がいる工廠へと駆けていった。のんびりと干物を齧っている明石が問い詰められたが当の本人にはまったくもって見当がつかなかった。その後、戻ってきた斉藤より該当海域に出発する日は4日後に決まった。この時、明石は自分が今までやってきた事に対して後悔した。
 4日後の夕方、佐潟鎮守府の面々は奇妙な格好をしていた。大淀以外の艦娘はクレーンや艤装を装備しているが、いつものセーラー服ではなく、いかにも漁師という格好であった。ご丁寧にライフジャケットも装備している。丁度、斉藤がこれからの行動について説明する所だ。
 「諸君、我々はこれより秘密作戦を実行する。この作戦は司令部を含んだ外部には一切知られてはいけない隠密作戦であるため、他の艦隊の支援は一切受けられない。だが、成功すれば、この戦争における我々の生存率は大きく変わるであろう。今回の目的は約4日前に東シナ海に沈んだ重巡の艦娘をサルベージする事である。明石を始めとする工廠チームが用意した偽装漁船に乗り込み、ターゲット地点において、明石のクレーンにより艦娘を引き上げ、この佐潟鎮守府に帰還するというのが今回の作戦行動である。なお、今回の秘密作戦は“フ号作戦”と呼称する。今を持って有効とする。何か質問は?」
 大井が素早く手を上げる。
 「アンタ、私達にこんな生臭そうな格好をさせて、どうしようというのよ?」
 「大井、作戦中の私の事は“船長と呼ぶように。君達にはあくまで漁船の乗組員であると誤魔化す為の格好だ。もし、他の艦娘達に見つかっても漁を行っていると通信を送る。展開させていない理由は魚が逃げる、もしくは漁場に高速移動中と答えよう。以上だ」
 こうして佐潟2174艦隊の秘密作戦が実行された。紅く輝く夕日が港を照りつける中、日本防衛軍、深海棲艦そして漁業権が交わる海域へ悠々と偽装漁船は出港していった。

続く
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~艦隊これくしょん 佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:その24~【二次創作小説】

この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。

佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第四章・その4

 数日後、提督の執務室で明石が何やら報告をしていた。提督が明石に頼んだクレーンの改造が終わったようだ。意気揚々とした表情で新型のアームに説明をしている。明石が手に持っているスイッチでクレーン先端に取り付けられている手のようなアームがにぎにぎ動いてる。
 「提督、このアームは従来の物と付け替えが可能なんですよ!状況によって使い分けができます。艤装を引っ掛けるならフックタイプ、艦娘を掴むならハンドタイプですね」
 「ハンドタイプのテストはできたのか?」
 「それが被験者いなくて・・・・・・」
 その発言を聞いて、秘書艦の机で事務作業をしている磯波を見る。それに気がついたのか慌てて首を振る。磯波の位置だと吊り上げの機能のテストにはイマイチであるため、この案は却下された。次はという事で、斉藤は窓の下を見る。窓の下ではこの間陳情で取り寄せた七輪で干物を焼いている大井がいた。しゃがみながら片手に団扇を持ちながら、じーっと干物を見ている。斉藤は窓の下に指を指しつつ、明石にアイコンタクトを送る。窓の下を見た明石は了解しましたという感じのサムズアップを見せる。ハンドタイプのアームがつけられ、大井の所に下ろされる。程なくして、ギャーギャー大声を出して暴れている大井が引き揚げられた。あまりにも煩いので、すぐに解放する事になった。しかし、ハンドタイプのテストは成功という結果で終わり、明石は満足気であった。
その翌日、明石と斉藤は菊地提督が持ってきた元・屋形船もといオンボロ船の前にいた。
 「て、提督、本当にこれを改造するんですか?」
 「そうだ」
 「この廃棄寸前のボロ船をですか??」
 「そうだ」
 「一体、どのようにですか?」
 「外見は漁船のようにする事、それと速度もある方がいい。装甲は後回しでいい。鋼材はあるだけを使ってもいい。可能であれば、色は夜には目立たない色にして欲しい」
 「私のクレーン改造の件といい、このオンボロ船の改造といい、提督は何を考えているのですか?」
 「完成すればわかるさ。今の鎮守府にはこれが必要だ」
 こうして佐潟鎮守府において、オンボロ船の改造作業が始まった。この鎮守府にとってはこれが最初の大掛かりな改造作業となった。日夜、ひっきりなしに工具の音が響いてくるのをそれを強調している。
 「ボロボロな船を修理しているみたいですけど、一体どんな事に使うのでしょうか?」
 潮が団扇で干物を仰ぎながら呟く。
 「あの提督に聞いたけど、はぐらかされたわよ。潮、このタレをそろそろ塗る頃合じゃないの?」
 「ああ、そうでした。薄く塗りますよ」
 「白ゴマも欲しいですね。今度頼んでみましょうか」
 鎮守府の片隅で大井、潮、磯波が七輪を囲みながら井戸端会議を行っている。最近の3人は仕事が一段落すると、干物を齧っている事が多い。逆に言えば、漁の手伝いでもらえる魚だけは沢山あるため、この鎮守府で気軽に食べる食べ物は必然的に魚となる。逆に言えば、魚以外の食料は鎮守府の修理に伴う慢性的な資金不足で、常に不足している状態であった。そんな状況の中で潮が干物に使うタレを、調味料から作ってしまったのだ。干物が主食状態である食料事情において、干物中毒になるのは必然であった。
 干物話に3人が華を咲かせている間、執務室では斉藤が干物を齧りながら通信文書を見ていた。戦況に関しては、斉藤がここに着任してからの状況から変わっていない。しかし、艦娘の撃沈情報に関しては毎日のように何件か発生している。もっぱら駆逐艦や軽巡洋艦クラスがほとんである。それ以外の艦種については全く見当たらなかった。それだけ激しい戦闘は現状では中々発生していないのだろう。
 「どうやら、威力偵察を行う敵部隊は最近出ていないみたいだな」
 「そうですね。最近は軽巡洋艦で構成された偵察部隊がこの周辺海域で出現しています。戦艦クラスが混じっている敵部隊は奄美大島の南側の海域で散見されています」
 「奄美か。奄美はさすがに遠いな。いくら何でも、アレの改造が終わったとしてもその辺りまではいけないな。辛抱強く待つしかないな」
 インド洋沖、東南アジア、そして沖縄本島。大規模な深海棲艦との戦いが行われたが、沖縄本島での戦いの後、大規模な戦いは確認されていない。それ以降、深海棲艦の補給艦が世界のあちこちで出没しているのが確認されている。この事から世界各国は深海棲艦は現在、補給行動中と認識となった。しかし、この期に攻められた東南アジアや沖縄本島を奪還しようという声が上がったが、世界各国の海軍も連続した大敗に疲弊しており、どちらも補給や装備の調達に追われる事になった。先に行動を起こせるのは、世界かそれとも深海棲艦かという状況になった。お互い補給部隊を叩き合い、日々、相手の邪魔をしている。

続く

~艦隊これくしょん 佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:その22~【二次創作小説】

この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。

佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第四章・その2

 3人が執務室から離れた後、斉藤は通信機を起動した。連絡先は、友人の菊地提督だ。
 「俺だ」
 テレビのモニターに、指を顔の前に組んだ菊地提督の姿が映し出された。
 「それは何のキャラクターのマネなんだい?」
 「やっぱりバレたか。それで今日はなんだ?物資の陳情かな?」
 「物資の陳情には違いないがちょっと毛色が違うかな。スピードが出せる漁船みたいな船で使っていないのがあれば譲ってもらいたいのだが」
 「これまた、変化球が飛んできたな。船かぁ。食料事情が芳しくないからいっそのこと、自分達で食料を確保しようという所か」
 「その使い方もあるな。あの輸送部隊に問題がある事は薄々感じている。この間、陳情したジャガイモはすぐには来なかったからな。しかし、今回は少し違うんだ。明石を乗っけてクレーン役をやってもらうつもりだ」
 「クレーンだって?宝探しでもするつもりか?深海棲艦が出てから幾多の貨物船が沈んだからな」
 「菊地は沈んだ艦娘がどうなってしまうのか気にならないか?要はそう言う事だ」
 「沈んだ艦娘……。成程、そういう事か。大体、察したぞ。多少ボロくてもいいな?その場合の修理はそちらでやってくれ」
 「話がわかる友人がいてくれてうれしいよ」
 「なあに、俺と斉藤の中じゃないか。ワハハハハハ」
 笑い声が響いたと思ったら、一方的に通信は途切れた。
 「大淀」
 「提督、何でしょう?」
 「今日から戦果報告で重巡以上の艦娘が沈んだ所があったら、その場所を特定して欲しい。正確な位置は難しいと思うから、おおよその位置でいい」
 「それくらいなら、戦果報告一覧表から調べられますね。やっておきます」
 大淀の返答を聞いた斉藤は満足そうな顔をして執務室を後にした。

続く

~艦隊これくしょん 佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:その21~【二次創作小説】

この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。

佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第四章・その1

 明石は後悔していた。口が裂けてもあんな事を言うんじゃなかった!しかし、出来てしまったからには後に引くことは出来なかった。深夜、丑三つ時の東シナ海海上にいるが、そこは九州指令本部から進撃許可を受けていない海域なのだ。すなわち、現在の佐潟鎮守府の戦力では苦戦必死の所である。不幸中の幸い(明石にとって)なのだろうか。今日は新月。月明かりが全くない中、手元のモニターを必死に見ていた。
 
――数週間前――
 
 「えっ?私のクレーンの性能ですか?」
 「そうだ。そのクレーンは艦娘一人くらいなら、持ち上げられるのか?」
 「ええ、大丈夫ですよ。駆逐艦から超弩級戦艦まで持ち上げられます。艤装がなければ、持ち上げるスピードも上がります」
 「でも、そのクレーンの先端だと引っ掛ける形だよな。マジックハンドみたいに掴むタイプは無理だろう?」
 「心配ありません。崖の下だろうと水の中だろうと、この子達がくっつけてくれますので」
 そういって工廠の片隅に目を向ける。そこにはコロボックルが黙々と作業していた。一応、このコロボックル達は、艦娘達は妖精さんと言っているようだ。
 「そうか。ならば水深200mくらいに沈んでいる物を引き揚げられように用意してくれないか。引っ掛けられない場合は括りつけて引き揚げられるような場合も用意してくれると助かる」
 「何かサルベージするみたいですね。わかりました。おそらく一週間くらいで出来ますね」
 「わかった。早速、作業に取り掛かって欲しい。少し先だが、船の改造も頼みたいからな」
 「クレーンの次は船ですか。ますます気になりますね。どんな宝物を引き揚げるつもりですか?」
 「それはまだ言えないな」
 そう言って斉藤は執務室に戻っていった。それと同時に出撃していた磯波達が佐潟港に戻ってきた。新たに出撃が可能になった海域だが、戦果はイマイチだ。佐潟港に来る前から実戦経験が豊富な大井は無傷であるが、磯波と潮が中破であった。沈める事が出来たのは5隻中2隻で、全部、駆逐イ級であった。
 「出撃する人数を増やすべきだわ!経験でフォローできる範囲も限度があるわよ!」
 大井は戻ってくるなり、斉藤の机を叩きながら声を張り上げた。
 「それはわかっているさ。戦闘は質よりもまずは数だ。少ない数で大勢の敵を相手にするには、今の戦力ではまず無理だ」
 「わかっているなら、あの埃を被っている機械を動かしたらどうなのよ!?」
 「あの機械は出来る限り使いたくないな。一番の理由は、欲しい艦種の艦娘が確実に出ないからだ。今まで溜めた資材を投入して駆逐艦が出たとしても現状を打破できるとは到底思えない。現に駆逐艦の本領は夜戦だからな。大井、君も最低でも軽巡クラスが仲間にいたらいいなと思うだろう。重巡以上のクラスが一隻いればなお良しだな」
 「ふーん。何も考えていないという訳ではないようね」
 「そうだ。所で、沈んでしまった艦娘がどうなってしまうのか気にならないか?」
 この質問に、執務室にいた全員がきょとんとした顔つきになった。
 「皆、疑問に思った事はないのか?沈んでしまった艦娘はその後、どうなるのか誰も知らないんだぞ。俺は気になる。深海棲艦の駆逐艦のエサになってしまうのかという疑問もあるからな。まあ、その話はまた今度だな。磯波と潮は入渠。明日は漁の護衛があるからしっかりと休んでおく事。以上、解散」

続く

~艦隊これくしょん 佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:その20~【二次創作小説】

この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。

佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第三章・その7

 「潮さん!私達でイ級を沈めるの!大井さんには考えがあるみたいなの!」
 「やっぱりあの人変ですよ!何を考えてるんだろう?」
 そう言いつつ、12.7cm連装砲を構える。射程は十分だ。
 「撃ちます!」

ガーンッッ!!

ドコーン!

ゴォオオオオォォォ!!
 爆発と爆炎に包まれながら、雄たけびを上げながらイ級は沈んでいった。
 「やったぁ!後はホ級だけですね!」
 磯波が大井の方をみる。ホ級に異常に接近しているが15.5cm三連装砲を撃つ気配はない。その状態を見て磯波は不可解な顔をした。何をしようとするのだろうか。
 「どうやら、砲弾の再装填は間に合わなかったみたいね!」
 その言葉を受けてかホ級はかなり慌てているようだ。それもそのはず、魚雷を回避したと思ったら自分に突っ込んできたのだ。しかも、砲撃をする素振りを一切せずにだ。そんな風に突っ込んできたら誰しもが不可解に思うだろう。
 「さっきの至近弾はよくもやってくれたわね!」
 大井はそう叫ぶとホ級を殴りつけた!強烈な右ストレートが炸裂する!ホ級はバランスを崩して海面に突っ伏する。
 「さよならよ」
 海面に倒れたホ級に向って、大井が15.5cm三連装砲が発射。超至近距離で発射された砲弾をホ級は回避する術もなく直撃、爆発四散した。
 「提督。戦闘が終了しました」
 『ああ、こちらも確認した。中々、エキサイトな所があったな。見ててハラハラしたよ』
 「このくらいのレベルならこういう戦い方も有りよ。一対一に持ち込めば、いろいろ試せるわよ」
 「わ、私にはとても真似できそうにありません!」
 『格闘戦は難しいからな。船に例えるなら、潜水艦に体当たりするようなものだ。とにかく、戦闘は終了だ。鎮守府に帰還するんだ』
 「了解です」
 大淀の分析によると、戦闘した艦隊はレベルが低いがこの付近の有力艦隊であるとの事だ。その艦隊にほとんど損害がない状態で勝利した事は大きかった。

 「艦隊、無事に帰還しました」
 「お疲れ様。今日の主力艦隊との戦果は上々だ。よくやってくれた」
 「あのくらいの相手、どうってことないわよ」
 「提督!やっぱこの人おかしいですよ!深海棲艦を直接殴りつけるなんて、非常に暴力的です!私には理解できません!」
 潮がそう発言した瞬間、大井が烈火のごとく反応し、あーだこーだの言い争いに発展した。大井が行った近接攻撃はリスクが高いが決まれば相手に大ダメージを与えられるのが確認されている。主に、血の気が多い艦娘が敵と接近した時に繰り出すのがほとんどで、戦艦や空母系に繰り出したり、自ら接近していくパターンは滅多にない。
 磯波の手によって2人は追い出され、廊下でギャアギャア続きをやっている。大人しそうな印象がある潮だが、大井には何故か強気だ。
 「提督。今回の戦闘結果を九州指令本部に送った所、遠方海域への出撃許可がおりました」
 「鎮守府近海よりも強力な相手が出てくるという訳か。戦力の充実も行わなければならなくなるのも時間の問題だな。近い内に偵察も兼ねて出撃しよう」
 この会話を遮る様に、潮の悲鳴が響いてきた。どうやら、大井に関節技を極められたようだ。人気がまったくない田舎に轟く罵倒と悲鳴。それでも寂れた地方を賑やかすには十分すぎる程、夜の港は静かだった。

第4章へ続く

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