この小説は艦隊これくしょん~艦これ~の二次創作小説です。佐潟2174艦隊・オンボロ鎮守府:第四章・その6
東シナ海方面に出港して2時間ほどして太陽が水平線に沈んだ所で、少しばかり偽装漁船に張り詰めていた空気が少しだけ和らいだ。すでに司令部から佐潟鎮守府に出撃許可が出ている海域から外れている。空母や戦艦が出没する海域では日中、艦載機が四六時中飛び回り、ひとたび見つかってしまえば空襲を受けてしまう。提督が乗っている偽装漁船が空襲をまともに受けてしまったら一溜まりもないだろう。しかし、夜になると艦載機は飛ばなくなるため空襲を受ける可能性はなくなるのだ。後は、深海棲艦の艦隊と鉢合わせなければいいのだ。
「提督。サルベージポイントまで後、どのくらいですか?」
「後、1時間程でポイントに到着だ。引き続き警戒を続けてくれ」
潮の問いに斉藤が答えた。船の運転は大淀が行い、他の乗員は望遠鏡で周囲を警戒している。
「望遠鏡をのぞき続けるのも疲れるわね」
大井がぼやいた。事前に用意した船酔い防止の薬を飲んでおかなければ、さすがの艦娘も船酔いを起こしてしまうだろう。
「て、提督!11時の方向に人影を確認しました!」
「敵かそれとも味方か!?」
斉藤が磯波と同じ方角を望遠鏡で除く。たしかにしっかりとした体つきの人影が6人確認できる。深海棲艦でしっかりとした体つき、すなわち人間に近い体つきのタイプは重巡以上だ。緊張が走ったが、6人の内の1人が弓を持っているのが見えたため、ホッと胸を撫で下ろした。斉藤は大淀以外のメンバーにしゃがむように指示を出す。艦娘が乗っている事をばれない確率を上げるためだ。
『こちら三角2057艦隊です。ここは危険な海域です。単独で航行中の漁船のようですが、警備はどうされましたか?よろしければ、三角の方まで護衛いたしますよ』
偽装漁船に備え付けれた無線機から声が響いてくる。大淀がどうしましょうという顔で斉藤を見たので、斉藤が無線機を取り、
「こちらときわ丸。気にかけてくれた事を感謝する。だが、大丈夫だ。この先で仲間の漁船と合流する手筈となっている。この漁船は足が速いのがウリだ。貴隊の武運を祈る」
仲間がいる等嘘八百な適当な言い訳をした後、大淀に船のスピードアップを命じる。出発の4日間の間に航行速度を 確認しておいたためスピードだけは本当であった。実際に、先ほどの艦隊はあっと間に操舵室に取り付けてあるバックミラーから消えていった。完全に日が落ちたのはそれからまもなくの事であった。深海棲艦に見つかるわけにはいかないので、照明はつける事はできない。空に輝く月明りを頼りに進むしかない状況であるが、今日は新月のため真っ暗であった。
「このあたりだな。大淀、一旦船を止めるんだ。磯波と潮と大井は引き続き哨戒を。怪しい船のような物が近づいて来たら容赦なくぶっ放せ!」
船が停止した後、操舵室に取り付けられた各種機材を起動していく。魚群探知機や金属探知機を起動していく。
「船長!この金属探知機はワイヤレスタイプじゃないですか!どこで手に入れたんですか!?」
「ああ、菊地に無理して借りてきてもらった。壊したりするんじゃないぞ」
明石が持ち込まれた機材を見て驚きの声をあげるが
「さて、明石。我々がこの海域から素早く帰るためには君の働きが肝心だ。アームを海中にいれて金属探知機とカメラの映像を駆使して探し出すんだ。ボウズで帰ったら何で秘密作戦と銘打った意味もなくなってしまうからな。すべては君次第だ。さあ、準備をしたまえ」
数十分後、船からクレーンのワイヤーを垂らす明石が確認された。
続く